ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「ん、今日はここまでにしよ」
「ふっ、はぁ……」
それから。
どれくらいキスしていたかわからない。
気づいたときには俺の息もあがってて、むぎは倒れそうなくらい力が抜けてて。
「大丈夫?」
「ん……」
こてんと俺の胸に寄りかかる彼女の頭をゆっくりなでる。
あー……さわりてえ。
開けたままのシャツからのぞく胸が、ほんのり赤く色づいて上下している。
っ、今めちゃくちゃキスしたばっかだろ。
我慢しろ。
彼女の体のこと考えろ。
そう思って、またさわりたくなる気持ちを必死に抑える。
「ごめんな、激しくして」
「ん、大丈夫……」
ぎゅうっと絡みついてきた華奢な体を抱きしめる。
ほんと、抱きしめるたび、ふれるたび。
泣きたくなるくらい、好きだって気持ちが滝のようにあふれてくる。
こんだけふれてもまだ足りないなんて。
俺、どんだけむぎに渇望してんだろ……。
けどこれ以上したら、ぜったいキスでとまらなくなる。
あと戻り、できなくなるから。
「あのね、なぎ、さ……」
「どうした?」
「話が、あるの、」
ゆっくり息を整えて、そっと顔をあげたむぎの顔。
「っ……」
緊張して、でもどこか期待するような色が、濡れた瞳に浮かんでいて。
ぽろりと落ちた涙、上気した頬、快感と羞恥で潤んだ瞳。
全てにグッときて、心臓が瞬く間にはやくなる。
「練習試合が終わったら……」
「うん……」
ドクンドクンドクン。
今から言おうとしていること、わかった気がする。
元々それは付き合う前から、むぎを好きになった瞬間からずっと思っていたことで。
俺は、ずっと。
むぎの。
「渚に、」
「うん」
「私のぜんぶ、もらって、ほしい」
──────むぎの、ぜんぶがほしかった。