ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
□彼女、プレゼントは私大作戦
「じゃあ、がんばろうね!むぎちゃん!」
「は、はい!」
それから2日後の土曜日。
今日は朝から渚のお母さん、汐さんにうちに来てもらっていた。
「手作りケーキか〜!
渚にはもちろん、サプライズ?」
「はい」
今日は、いよいよ練習試合の日。
渚とお互いのぜんぶをあげるって約束した日。
そして。
「渚ももう17か〜!
子供の成長って、ほんとに早いわ!」
なんと、今日は渚の誕生日ってことで。
渚には内緒で、夜はお祝い。
そのためにバースデーケーキを作るつもりの私。
でもさすがにケーキは作ったことなくて、どうしようって困ってたら、汐さんから、
『今週渚の誕生日だけど、なにか必要なものとかある?』
そのお言葉に甘えて、
『だーいすきなむぎちゃんのためなら、あたしいくらでも教えてあげる!なんせあたし、昔ケーキ屋でバイトしてたから!』
軽くパティシエも目指してたのよ?
朝早く渚が家を出ていったのを確認して、すぐに汐さんに来てもらった。
「なんか、来たときよりも奥さんらしくなった?
渚とはいい感じ?」
「うっ、まあ、はい……」
「ふふふっ、よかった!
その指輪も、渚から?」
「はい……汐さんたちのお仕事手伝ったって」
「ふふふっ、昔からむぎちゃんむぎちゃん言ってたあの子が、急にむぎちゃんから離れてバイトしたいなんて言うもんだから、どうしたのかと思ってたけど、そういうことだったのね」
幸せでそうで、ほんとによかった。
目を細めてやわらかく笑ってくれる汐さんに、こんなに幸せでいいのかな、なんて涙が出てきそうになる。