ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


そっと横から肩を抱かれたと思ったら、庇うように、私の前に立つ渚。


「え、久遠の?
もしかして、あのウワサの……」


「そうそう、久遠が激重感情抱えてる、例の婚約者ちゃん」


「朝日くん!」


声がしたほうを見ると、ふっと笑った朝日くんは、渚と並ぶように私の前に立った。


「たしかにその通りだけど、そんな大声で叫ぶなよ、朝日」

「えー、だってこいつら頭悪そうだし、大きい声で言わなきゃ伝わんなさそうじゃん」


「おっ、まえ……!」


「この子に何かしたら……というか、近づいたら殺されるよ?まじで。それでもいいの?」


そう言って渚をチラッと見た朝日くん。

つられてその人たちも渚を見て……ひっ!と情けなく悲鳴をあげて真っ青になる。


「ほらね。だから言ったじゃん」


「朝日。あと任せた」


「はいはい、お疲れ。
今日はありがと」


「ほんと変わったよな、おまえ……」


「まあね。
てか、また助っ人頼んでいい?」

「もうやらない。
むぎにさわれないのが何日も続くなんて、もうこりごりだから」


「相変わらずだね。
星見さん、久遠のやつ、ねちっこそうだから気をつけてね」


「だれがだよ」
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