ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


それから、学校から少し離れた、人気がないところまで来たところで。


「せっかく迎えに来てくれたのにごめんな。
出てくるの遅くなって」


「ううん、平気だよ。
すぐ来てくれたし」


さわられるとかも、なかったし。


「ほんとに?嫌な思いとか、してない?」

「うん。
渚の姿見たら、そんなのもう忘れちゃった」


「っ……はぁ、もう、」


「な、渚……?」


ぎゅっと繋いだ手を優しく引かれて、ポスンと収まる私の体。


「今日、試合始まる前も試合中も、ずっとむぎのこと考えてた」


「ええっ!?
そ、れは……試合は、どうだったの?」


「俺がいるんだよ。
負けるわけない」


なんてニヤリと口角をあげて笑う渚。

ほんと、かっこいい……。


「でももう終わったから」

「え?」


「存分にむぎのこと、愛してあげられるから」

「っ……」


私の頬をするりとなでて、ゆっくり耳元へ近づいて。


「いっぱいふれさせて」


それからの帰り道は緊張で、なにを話したかは覚えてないけれど。


今夜、私はすべて渚のものになる。

身も心も、ぜんぶ。
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