ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
***


「はー、おいしかった」


「よかった。ケーキもあるよ」


「うん。めっちゃ楽しみ。
あとで食べるな」


「わかった」


それから家に帰ってきて、渚の誕生日をお祝いした。


そういえば今日、誕生日だったっけって、渚が言うもんだから。


『自分の誕生日、忘れちゃったの?』


『いや、毎年むぎにプレゼントもらえるって半年前からウキウキして、カウントダウンしてたから忘れたことない』


『半年前から!?』


『うん。でも今日は……』


『むぎのぜんぶをもらえるって思ったら、誕生日忘れるくらいうれしくて、それしか頭になかった』


なんて囁かれたら、もう私の頭の中はごはん中もこの後のことでいっぱいになって。


「渚……」


「ん?」


「その、渡したいもの、あって」


「渡したいもの?」


ソファーでくつろいでいた渚の隣に座って、私が差し出したのは、とあるお店で買ったもの。

見た目はラッピングされて、正直買うのがめちゃくちゃはずかしかったそれ。


「その……」


「うん」


「それ着て、待っていてほしいの」

「え?」


「外にある、プールで」
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