ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「いつの間に、こんなかわいいの買ってたの?」


それからすぐ、こつんとおでこがぶつかって。

穴が空くんじゃないかってくらい、じっと見つめられた。


「その……前に、那咲と土方くんと、4人で遊びに行ったとき」


「もしかして、あのとき俺たちと別行動したいって言ってたのって……」


「そう、これ買いに行ってたの」


私が着ているのは、胸元と、腰の両側に大きなリボンがついた淡いライトブルーの三角ビキニ。


「この色、もしかして……」

「うん、なぎさ、色……」


涼しげで、一見冷たそうに見えるけれど、本当は誰よりも優しい渚の色。

この水着を見たとき、もう渚の色としか思えなかった。


「俺色に、染めてほしいってこと?」


ニヤリと笑った渚。

でも水で濡れた前髪からのぞくその瞳は、ぞくりとするくらいの熱が渦巻いていて。


「な、教えて」


その瞳を見ていられなくてぎゅっと唇を噛みしめてたら。


「っ、ん……っ」


どこか急かされるように、胸から鎖骨、うなじに回った肩ひもの部分をやんわり引っ張られた。


「むぎ」

「ふっ、ぁっ、う……」


冷たいプールの中で、熱い指先が体を伝う。


早く、教えて。

早く、ふれたい。


その体温が、強く、強く、訴えかけてくる。


「もう、なってる、よ……」

「え?」


「渚を好きになったときから、もうずっと。
身も心も渚で、いっぱい……」


「っ、むぎ……」


「その……今日は、渚の、誕生日でしょ……?」


「うん」


「だから……」


うなじのリボンを軽く手にとって、渚を見つめる。

はずかしさなんて、緊張なんて。


「プレゼントは、私。
私のぜんぶ、もらってください……」



もう、とっくになくなっていた。


瞬間。
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