ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

【渚side】


心臓がぎゅっと締めつけられる。


体を火照らせて、涙を流しながらも。


「好きだよ、すき、すきだ……すっげえすき」

「私も……っ、すき、……すき、だよ、」


俺の言葉に同じように返してくれて、しがみつくように、俺の背中に腕を回してくれて。


「むぎ……っ」



幸せすぎて、彼女が好きすぎて泣きそうになる。

泣かないけど。

だせえから、ぜったい泣いてる姿とか見せたくないけど。


「なぎ、さ……」

「ん……?つらい?」


「っ、あ、ちが、く、て、」


きっと、かわいい声を抑えられないんだと思う。


「だめ。声聞かせて」


はずかしそうに口を手の甲で抑えようとするその手をとって、


「どうした?」


なるべく優しい声で、ぽろりと落ちた涙に口づければ。


「なぎ、さ……っ」

「ん?」


体、めちゃくちゃつらいはずなのに。

なのに、とんでもないくらい綺麗な顔で、笑って、俺に手を伸ばして。


「私と、出会ってくれて、好きになってくれて、ありがとう」


「っ……」
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