ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


もう、ほんとに……っ。

なんて、でも私も渚にふれてほしいって思うのは本当で……。


「ほんとはむぎも嬉しいくせに」

「し、知らないっ」


この世の甘いもの、すべてを煮詰めてとかしたみたいな目で見てくるから、それ以上なにも言えなくて。


「本当は?」

「……うれしいよ、ばか」


「かわいーなー」


ぼんっと赤くなる私に、ますます渚は目尻を下げて笑って、私の頭をポンポンする。


「むぎ」


「ん?」


「ちょっと、こっち」


「えっ、どこ行くの!?
那咲たちと、はぐれて……」


「いいから。
たぶん、碧もそうするだろうし」


「なにが?」


それから連れてこられたのは、人気のない静まり返った境内の裏。

どこか遠くの方で、屋台のにぎやかな声が聞こえてくる。


「だれも、いないよ?」

「うん。だって早くむぎとふたりになりたくて」

「っ!!」


見つめてくるその目は、ゾクッとするくらい熱っぽくて。

声は、夜限定で、ベッドの中で聞く、耳がとけそうなほど甘ったるい声。


「ま、まって……」

「ごめん、待てない」


そう言って、渚は私の唇を深く塞いだ。
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