ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「俺もだよ」
「え?」
「かっこいいとこ見せたいのに、むぎとふたりだと、そんなのもう、どうでもよくなる」
「それって……」
むぎのことが好きだから、俺のことぜんぶ知ってほしいし、見せたいってなるんだよ。
「っ……」
「俺のぜんぶを知ってるのは、過去も今も未来も、ずっとむぎだけ。むぎは?」
「私も……私のぜんぶを知ってるのは、これからもずっと渚だけだよ」
はずかしいところも、好きなものも、ぜんぶを知っているのはお互いだけ。
「なんか、ぜんぶ知ってるって響き、めちゃくちゃやらしくない?」
「それは渚でしょ。
私はそんなこと思わないから」
そう言うと渚はふーん?と笑うと、なぜか私の耳にグッと顔を近づけてきた。
「な、なに?」
「たぶん、むぎが思ってる100万倍はやらしい男だよ、俺」
「なんの告白!?」
「てことで、はい、早く家帰ってイチャイチャしましょうねー」
「なにが、てことでなのか、全く意味わかんないんだけど!?」
私の手をぎゅっと握って、優しく引く渚。
口ではそんなこと言うけど、私が嫌だと言えばぜったいにとまってくれるその優しさ。
「なら、もっと、もっと……。
考えてること、隠してるもの、ぜんぶ見せてよ、渚」
「ほんとにいいの?
そんなこと言われたら俺、まじでとまんなくなっちゃうけど」
「いいよ。
私はもう渚にぜんぶ見せちゃってるし」
「そうだな。たとえばここ、弱いとか」
「っ、どこさわってんのばか!」
ニヤリと笑う渚に、またよりいっそう赤くなる私。
「ねえ、渚」
「なに?」
「見せてよ、ぜんぶ」
「それを言うならむぎもだろ。
もっと俺に教えてよ」
ふたりきりで、全部、ぜんぶ。
Fin.