ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「それで、どうなったの……?」
「それから渚のこと、避けてる」
「そっか……」
適当に街をブラブラして、夜になるのを待って、家に帰ったのは夜8時くらい。
さすがに渚は帰ったみたいだったけど、お母さんには怒られてしまった。
「お母さんに聞かれなかったの?」
「うん……珍しく、聞いてこなかった」
きっと、めちゃくちゃひどい顔してたんだと思う。
なんとか症状が落ちついたあとも、渚を拒んでしまったことに泣いて泣いて泣いて。
なんでこんな体質なのって。
好きな人からのキスも喜べないなんてって、泣くしかできなくて。
まぶたは重いし、泣きすぎたせいか、目も痛くて。
「おかえり。
ご飯、できてるからね」
いつも渚のことでテンションが高いお母さんが気づかないはずないのに。
それから帰ってきたお父さんも、ふたりとも特になにも聞いてこなかった。
「ねえ、むぎ」
「なに……っ、ひゃあ!?」
ちょんっとうなじをつつかれて、ビクッと肩が跳ねてしまう。
「いきなりなにするのっ!?」
「あ、やっぱそれ、変わってないのね」
「ううっ、傷口を抉るようなこと言わないでよ……」
「ごめんごめん。
つい確かめたくなっちゃって」
「はぁ……」
「突き飛ばしたのはそれが原因?」
「うん……」