ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


以上の3つが主な症状なわけだけど……。


この症状に気づいたのは、中学のとき。


たしか、渚を好きだと自覚したときからだった。


いつもと同じ渚との帰り道。

うしろからきた自転車が、私の横スレスレを通りすぎようとした瞬間。


「むぎ」


「なに……っ、!」


グイッと手を引かれて、渚の腕の中におさまる。


「っ、危な……っ。
大丈夫か?」


「っ、あっ、へい、き……」


っ、え……?

なに、これ……。


急にぶわっと真正面から熱風でも受けたみたいに体が熱くなる。


なんとなく、元から人よりもくすぐったいのに弱いんだろうなって思ってた。


那咲とか他の子からこちょこちょをされたときに、あまりにすぐにギブアップするからって、みんなますますニヤニヤして。


でも、あのときのはそんなものじゃなくて。


「むぎ?
ほんとに大丈夫?」


「なっ、えっ……?」


「ほんとにどうした?
熱でもあるんじゃ……」


「っ、あ……、」


ぴとっとおでこに当てられた手は、低温な渚らしく、少しひんやりとしてて。


「あっつ……ほっぺたも……なんで我慢してたの?つらいときは俺に言うって言ったろ?」


少し責めるような、鋭い瞳。


違う。

そう言いたいのに、声が出ない。


言葉と雰囲気だけ見れば、渚は冷たいって思われるかもしれない。

でもその瞳の奥と、私にふれる手は、心配だって強く言ってるから。


「なぎ、さ……」


「うん?
つらいよな。大丈夫だよ」


ポンポンと背中をなでる手は、子供をあやすみたいに優しい。

でもそれも、ますます悪化させるものにすぎなくて。


「っ、そうじゃ、なくて、」

「どうした?」


やめて、ほしい。

そう言おうとしたけれど。
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