ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「ふっ、え……」
「っ、むぎ!?」
その瞬間、気づいた。
やめてほしい。
さわらないで。
そんなこと……好きな人に、渚に、言えるわけない。
体調が悪い私を気遣ってくれているのに。
渚の優しさを無下にしたくない。
そう心は叫んでいるのに。
体が、ついていかない。
「よしよし、大丈夫。
大丈夫だから」
友達や、那咲、家族にふれられるのならまだ我慢できる程度だけど。
なぎ、さ……。
渚に。
大好きな渚に、ふれられたら。
私は、おかしくなってしまう。
体が火照って、今みたいにぽろぽろ涙がとまらなくて、震えて。
大好きな人にふれてもらえること。
それは誰よりも甘くて、幸せで、もっともっとってほしくなるはずなのに。
私にとってはこの異常体質を、悪化させることにすぎないから。
「部屋まで送ってく。
おばさん、今日遅いだろ?」
「だい、じょぶ、だから……っ、」
「だめ。
泣いているおまえ、1人にしたくない。
心配で頭おかしくなる」
「っ……」
「心配なんだよ。
な、俺がそばにいたらいや?困る?」