ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
***


「特殊体質……?」


「うん……」


それから私は話し始めた。


症状が出始めたのは、中学の……渚を好きだと気づいたときからだということ。


主な症状は3つあること。


今泣いているのも、キスされて突き飛ばしたのも、それが原因だったこと。


「じゃあ、前に帰り道で俺がさわろうとしたときに離れたり、避けようとしてたのも、それが原因だったってこと……?」


「うん……」


つないだ手にぎゅっと力がこもる。

つないでいると言っても、薄い毛布越し。


『話聞いてるとき、さわってたい。
だめ、か……?』


『っ、だめじゃない、けど……っ』


『けど?』


『……』


『もしかして、これから話してくれることと関係してる?』


『うん……』


ベッドにお互い向き合って座って、私の手をとろうとした渚の手がとまる。


『ごめんな』


『えっ……』


降ってきた言葉に顔を上げたら、悔しそうに顔を歪めて、伸ばされた手がぎゅっとこぶしを作った。


『ずっとそばにいたのに、好きな子がずっと悩んでたのに、気づかない挙げ句、なにもできなかった自分が情けなさすぎて』


『っ……!!』



まさか、そう言われるなんて思ってなかった。


生まれたときから今までずっと。

一番そばにいた女に、隠しごとをされていた。


そんなの、裏切られたも当然だって考えてもいいはずなのに。


『たぶんその様子だと、結構前からって感じだよな……っ、くっそ、もっと早く、俺が……っ』



話さなかったのも、ずっと秘密にしていたのも。

気づかれないように我慢していたのも。


ぜんぶぜんぶ私が原因で、怒る相手は私のはずなのに。


渚が怒ってるのは自分自身に対して。


私を好きでいてくれたから。

そばにいてくれたから。


だから渚は、そんな泣きそうな顔で悔しがって、自分を責めて。


胸がぎゅっと、強く強く締めつけられる。


ああ、私は……。

私は渚の、なにを見ていたんだろう。
< 47 / 332 >

この作品をシェア

pagetop