ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
『渚』
『なに……っ、え?』
緊張で震えそうになる手に力をこめて。
そばにあった薄い毛布をその上にかけて、渚の手を握る。
『本当は、直接渚にふれたい。
でも、私はふれることができないから……』
『……うん。その、理由は?』
毛布越しだけど、じんわりと渚の優しい体温が伝わってくる。
大丈夫だよ。
何度もそう、囁いてくれてるみたい。
『聞かせて、むぎ。
むぎが背負ってきたもの、今度こそ俺もいっしょに背負いたい』
『渚……』
『俺は、むぎの彼氏で婚約者だから。
なによりも……むぎが好きだから』
『悩みがあるなら、それもぜんぶいっしょに解決したい。むぎの悩みは俺の悩み。むぎだけじゃなくて、俺とふたりの問題だから。いっしょに悩みたいんだよ』
『っ……ふ、』
やっぱり渚は渚だった。
甘くとけた目で、変わらず愛を紡ぐ渚に、目の奥が熱くなって、また涙があふれてくる。
『というか、むぎが他のやつに悩みを相談するのがいやだ。まあ、森山……は、ギリいいけど、むぎが一番に頼りにする相手は俺でいたい』
『っふ、笑わせないでよ、こんなときに……。
渚、重すぎ』
『重いよ?
だって、むぎの好きなとこなんて100個は上げられるし、むぎの世界には俺以外いなくなったらいいのにって思うくらいには』
ま、真顔……。
さも当たり前のようにケロリとして言う渚に、
私だって、渚のいいとこ、数えきれないくらいいっぱい知ってるんだよって、伝えたいから。
『まあ、いいや。
これから先、そこんとこ、ウンと教えてあげるから。だからまずは……』
教えて、むぎ。
俺に、ぜんぶを教えて。
『渚……』
私もまずは、この秘密を話さなくちゃいけない。
『あの、渚』
『うん、なに?』
『私。私ね……』
人よりも異常に敏感っていう、体質なの。