俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。〜交際0日婚で腐女子の私は甘々に溺愛されてます〜
 ……行きたくない。まだぼんやりした意識の中でもそう思う程行きたくないけれど、青春時代を俺の世話に費やしてくれた姉の為と思うと重い腰を上げるしかない。あと数日頑張れば解放されることは長年の経験から分かっている。(もう何回やらされた事か……)
 売れっ子BL漫画家なのになぜかアパートで黙々と一人で作業するのが好きらしい。リモートでアシスタントさんには背景などをお願いしているらしく、煮詰まると俺と広志さんが呼ばれて昨日みたいな自体になる。(思い出しただけて身体が震える……)
 起こさないように軽く美桜の頬にキスを落としベットから降りた。今日も出掛けないといけない事をまだ美桜に言えていない。また実家に行くと言ったら不思議がられるだろうか、それとも何も気にせずいってらっしゃい、と言われるだろうか。朝ご飯は美桜の担当だが昨日の夜が遅かったからかだろう、まだ眠っているので代わりに作っておく。冷蔵庫を開けるとお皿に乗ったハンバーグがラップされている。

「もしかして美桜が作ってくれたのか……?」

 自分は料理が苦手だと言っていた美桜がこんなにも美味しそうなハンバーグを作って俺の帰りを昨日は待っていてくれていたなんて思いもしなかった。申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。
 電子レンジで温めて一口食べる。……美味しい。あの黒焦げのお肉を焼いた美桜とは思えない。どれだけ時間をかけて作ってくれたのか、嬉しくて箸が止まらない。ペロリと平げてしまった。
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