すべてが始まる夜に
出張ですか?
月曜日になり、また新しい一週間が始まった。
朝、会社に出社すると、部長はいつものように自分の席に座って仕事をしていた。その姿を見て元気になったんだと思い、安心する。
おはようございます、とフロアに聞こえるように声をかけると、最初に目の前の席の吉村くんが反応した。
「おはよ、白石。松永部長、出張から戻ってきてるぞ」
「あっ、うん。そうみたいだね」
もう既に知っているとも言えず、部長の姿を確認するように視線を動かしたあと、吉村くんに向けて愛想笑いを浮かべる。
「なんか部長に相談したいことがあったんじゃないのか? 先週、部長のこと気にしてたよな?」
「えっ? あっ、うん。でも今忙しそうだから……」
部長は朝から難しい顔をして資料見ながら真剣にパソコンを打っている。
そもそも先週私が部長のことを気にしていたのは、あのとんでもない発言の後、どんな顔をして仕事をすればいいか悩んでいただけで、部長に相談があるために気にしていたのではない。
そんなことを知らない吉村くんは私が遠慮していると思ったのか、体を私の席の方に近づけて声をひそめるようにトーンを落として話し始めた。
「忙しそうって、これからみんなが出社してきたらもっと忙しくなるんじゃないか? まだ人が少ない今のうちに相談しておいた方がいいと思うけど。声かけづらかったら俺が部長に聞いてやろうか?」
「ううん、じっ、自分で聞くから大丈夫。これからちょっと部長に聞いてみるね」
吉村くんには申し訳ないけれど、週末の出来事もあって今は放っておいてほしいのにな──。
そんなことは言えず、私は慌てて首を横に振ると仕方なく松永部長の席へと向かった。
朝、会社に出社すると、部長はいつものように自分の席に座って仕事をしていた。その姿を見て元気になったんだと思い、安心する。
おはようございます、とフロアに聞こえるように声をかけると、最初に目の前の席の吉村くんが反応した。
「おはよ、白石。松永部長、出張から戻ってきてるぞ」
「あっ、うん。そうみたいだね」
もう既に知っているとも言えず、部長の姿を確認するように視線を動かしたあと、吉村くんに向けて愛想笑いを浮かべる。
「なんか部長に相談したいことがあったんじゃないのか? 先週、部長のこと気にしてたよな?」
「えっ? あっ、うん。でも今忙しそうだから……」
部長は朝から難しい顔をして資料見ながら真剣にパソコンを打っている。
そもそも先週私が部長のことを気にしていたのは、あのとんでもない発言の後、どんな顔をして仕事をすればいいか悩んでいただけで、部長に相談があるために気にしていたのではない。
そんなことを知らない吉村くんは私が遠慮していると思ったのか、体を私の席の方に近づけて声をひそめるようにトーンを落として話し始めた。
「忙しそうって、これからみんなが出社してきたらもっと忙しくなるんじゃないか? まだ人が少ない今のうちに相談しておいた方がいいと思うけど。声かけづらかったら俺が部長に聞いてやろうか?」
「ううん、じっ、自分で聞くから大丈夫。これからちょっと部長に聞いてみるね」
吉村くんには申し訳ないけれど、週末の出来事もあって今は放っておいてほしいのにな──。
そんなことは言えず、私は慌てて首を横に振ると仕方なく松永部長の席へと向かった。