すべてが始まる夜に
打ち合わせをした翌日、早速部長から出張に関するメールが届いていた。

ほんと、部長って仕事が早いよね……。
昨日もあの後、別の会議が入っていたようだし、今日も朝から吉村くんと打ち合わせ中だ。
どんだけ仕事が好きなんだろう。
そう思いながらメールを開くと、出張は来週の金曜日と記載されていた。

「えっ? 来週の金曜日?」

思わず大きな声を上げてしまい、慌てて顔を下に向ける。こんなに早く出張に行くとは思っていなかった。
昨日部長が突然言い出したことなのに、もう出張の許可が下りたのだろうか。

すると、私の声に反応した若菜ちゃんが隣から声をかけてきた。

「茉里さん、どうかしたんですか? 来週の金曜日って何かあるんですか?」

「あっ、ごめんね。うるさかったよね。実は福岡に出張が決まっちゃて」

「えっ? 出張ですか? 茉里さんが?」

珍しく若菜ちゃんが目を丸くして驚いている。

そうだよね。
私たちの部署って元々出張なんてない部署だもん。
若菜ちゃんだってびっくりするよね。

「そうなの。昨日部長と打ち合わせしたでしょ。その時に決まって。昨日の話だったからこんなに早く福岡に行くことになるとは思ってなくて……」

「そっ、それって茉里さんだけですか? それとも、松永部長も?」

や、やっぱりそこ気になるよね。
社内で部長のこと好きな女性いるみたいだし。

「うん、部長も一緒みたい。でもね、最初だけみたいだよ。慣れたらひとりで行ってもらうって」

若菜ちゃんや他の女性が気にならないように明るく答えたつもりだったのに、なぜか若菜ちゃんは慌てたように吉村くんのことを聞いてきた。
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