すべてが始まる夜に
「す、すごっ。『恋愛パーフェクトマニュアル』に『恋愛の法則』、『恋愛のルール』に『初めてデートするときに読む本』って、なんだよこれ?」

薄っすらと笑いを浮かべながらパラパラとページを捲り、「へぇー、こんなことが書いてあるんだな」と頷いている。

「まあ書いてあることは分からないでもないが、ひとつ言えることはここに書いてあることを実行して、その女を好きになる男は一部だってことだな。逆に言えば、世の中の男全員にこんなことをしても通用しないってことだ」

「通用しない?」

「ああ、通用しないと思うぞ。白石のことを本当に好きな男を見つけるにはこの方法は役立つかもしれないが、でもそこには白石の好みは反映されないからな」

部長の言っている意味がよく分からない。
どういうことですか? と首を傾げると、部長は「なんて説明したらいいかな……」と腕を組んで考え始めた。

「例えばさ、うちの会社の男全員が白石にメールをしてきたとするだろ。ありえないけど例えばの話だからな。で、白石はこの本に書いてある通り、男から連絡が来てもすぐに返信はするな、少し時間を空けてからしろという項目を守り、時間を空けてから返信したとする。その時点で白石に興味のない男たちは白石から連絡が戻ってきてもその後は返信しないだろう。ここまでは理解できるか?」

優しく微笑む部長に向けてコクリと頷く。

「白石から返信が来た男たちは次にデートに誘ってくるだろう。で、白石はまたこの本に書いてある通り、すぐにOKするな、2、3回誘われてからOKしろという項目を守って3回目の誘いでOKしたとする。その時点ですぐにOKしてもらえないと思った男たちは他の女を探そうとするだろう。こうしてどんどんこの本の通りに行動していって最後に残った男が本当に白石のことを好きな男だよ。その男と付き合ったら上手くいくとは思う」

なるほど。そしたら上手くいくのか。
じゃあ今まで上手くいかなかったのは、本当に好きじゃなかったってこと?
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