すべてが始まる夜に
「それは絶対にないから。私のこと好きなんてあり得ないから。お互いそういう対象の人じゃないし」

「でもそれは茉里さんの見解ですよね? 茉里さんは恋愛対象に見れないのかもしれないけど、きっと相手は茉里さんのことそういう対象として見ていると思いますよ。その人と付き合ってみたらどうですか?」

「わっ、若菜ちゃん何言ってるの? 付き合うなんてあり得ないから」

「そうですか? まあでもですね、明日か明後日には前と同じように目を合わせてくれるようになりますよ」

若菜ちゃんはなぜか自信を持って大きく頷きながら、心配しないで私に任せてくださいと笑顔を向けてくる。

私は部長だなんてひとことも言ってないのに、もしかして気づいたとかじゃないよね?

「若菜ちゃん、あの、明日か明後日ってどうしてそんなことが分かるの?」

「あっ、いえ、ただそんな感じがしただけです。茉里さん、そんな気にするようなことじゃないですよ。ただ単に、その人が茉里さんのことを好きすぎるって話ですよ」

「ほんとにそんなんじゃないの、若菜ちゃん」

私が何度否定しても若菜ちゃんは「心配することありませんから」と言って楽しそうに笑うだけだった。
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