すべてが始まる夜に
タクシーの中でチラリと腕時計を確認すると、時間は14時半になっていた。
「部長、もうすぐ3時になるんですね。意外といい時間ですね」
「そうだな。ホテルにチェックインしたら少し休憩するか?」
「えっ? 九州支店に顔を出されるんじゃ……」
「そう思ってたんだが、顔出したらそのまま飲みに連れて行かれそうだろ? それに今回は日帰りの出張で申請しているし、別にやましいことはないんだが、変な噂がたっても面倒だしな」
そっか。
日帰り出張なのに宿泊するって知られたら……。
しかも部下の女性と一緒となると、絶対に怪しい目で見られちゃうよね。
「すみません。私が宿泊してもいいですかなんて言ったばっかりに……」
「白石が謝ることないよ。それに同意したのは俺だから」
そんなに気にするな──と言いながら、口端を上げて柔らかい表情で微笑む。
私は申し訳なく思いながら「ありがとうございます」と言って頭を下げた。
和食のお店からホテルに到着した時には、既に時刻は15時前になっていた。
タクシーを降りてホテルを見上げる。
そこには大型の高級そうなホテルがそびえ立っていた。
「部長、ここが今日泊まるホテルですか?」
「そうだけど。別のホテルが良かったか?」
「いえ、そうじゃなくて、こんな高そうなところ……。私はてっきりビジネスホテルだとばかり思っていたので……」
「そんなに高くないよ。気にすんな。白石には色々と世話になっただろ。行くぞ」
行くぞって言われても、こんな高そうなホテル……。
部長に出してもらうなんて申し訳ないじゃん……。
ドアマンがエントランスのドアを開けてくれて、部長がホテルの中へと入っていく。私も急いで部長の後に続いて歩いていった。
部長と一緒にチェックインを終えて、エレベーターの前に移動する。
「白石、俺はこれから少し仕事をするから、5時半になったら下に降りてきてくれるか? それまでは自由にしてていいから」
「わかりました。部長もお部屋は12階ですか?」
「俺? 俺は10階だ。お前は女性専用フロアだから俺と一緒なわけないだろ」
「うそっ。私、女性専用フロアなんですか?」
「ああ、それで予約したから。ビジネスホテルや男性と同じフロアだったらセキュリティ面で不安だろ?」
部長って本当に気が利くっていうか、こういうところまで気を遣ってくれてるんだ……。
本当に尊敬しちゃうしモテ要素満載だよね──と感心していると、あっという間にエレベーターが10階に到着し、「じゃあ、またあとでな」と言って部長は片手をあげて降りていった。
「部長、もうすぐ3時になるんですね。意外といい時間ですね」
「そうだな。ホテルにチェックインしたら少し休憩するか?」
「えっ? 九州支店に顔を出されるんじゃ……」
「そう思ってたんだが、顔出したらそのまま飲みに連れて行かれそうだろ? それに今回は日帰りの出張で申請しているし、別にやましいことはないんだが、変な噂がたっても面倒だしな」
そっか。
日帰り出張なのに宿泊するって知られたら……。
しかも部下の女性と一緒となると、絶対に怪しい目で見られちゃうよね。
「すみません。私が宿泊してもいいですかなんて言ったばっかりに……」
「白石が謝ることないよ。それに同意したのは俺だから」
そんなに気にするな──と言いながら、口端を上げて柔らかい表情で微笑む。
私は申し訳なく思いながら「ありがとうございます」と言って頭を下げた。
和食のお店からホテルに到着した時には、既に時刻は15時前になっていた。
タクシーを降りてホテルを見上げる。
そこには大型の高級そうなホテルがそびえ立っていた。
「部長、ここが今日泊まるホテルですか?」
「そうだけど。別のホテルが良かったか?」
「いえ、そうじゃなくて、こんな高そうなところ……。私はてっきりビジネスホテルだとばかり思っていたので……」
「そんなに高くないよ。気にすんな。白石には色々と世話になっただろ。行くぞ」
行くぞって言われても、こんな高そうなホテル……。
部長に出してもらうなんて申し訳ないじゃん……。
ドアマンがエントランスのドアを開けてくれて、部長がホテルの中へと入っていく。私も急いで部長の後に続いて歩いていった。
部長と一緒にチェックインを終えて、エレベーターの前に移動する。
「白石、俺はこれから少し仕事をするから、5時半になったら下に降りてきてくれるか? それまでは自由にしてていいから」
「わかりました。部長もお部屋は12階ですか?」
「俺? 俺は10階だ。お前は女性専用フロアだから俺と一緒なわけないだろ」
「うそっ。私、女性専用フロアなんですか?」
「ああ、それで予約したから。ビジネスホテルや男性と同じフロアだったらセキュリティ面で不安だろ?」
部長って本当に気が利くっていうか、こういうところまで気を遣ってくれてるんだ……。
本当に尊敬しちゃうしモテ要素満載だよね──と感心していると、あっという間にエレベーターが10階に到着し、「じゃあ、またあとでな」と言って部長は片手をあげて降りていった。