すべてが始まる夜に
あっという間に天神駅に到着し、地上に出ると、周りにたくさんの屋台が見えてきた。
「うわぁ、ほんとに屋台がいっぱいだ! 部長、こんな街中に屋台がたくさんあるんですか? これっていつも?」
「そうだよ。いつもこんな風にたくさん出てるよ」
「すっごーい。こんなにたくさんあるとは全然思ってなかった」
仕事帰り風のスーツは着ているものの、完全に観光客だということが丸わかりなように周りをぐるぐると見渡しながら目を見開く。
「あっ、あの屋台ラーメンだって。こっちは焼き鳥、おでんにもつ鍋、焼きラーメン? 天ぷらに明太子入り玉子焼き? うそっ、タコスまである!」
興奮して暖簾に書いてあるメニューを読み上げる私に、部長は我慢が出来なくなったように吹き出した。
「白石、お前興奮しすぎだろ? まるで小学生の子が喜んでるみたいだな」
「だっ、だって、ほんとにこんなにたくさん屋台があるなんて思ってなかったんですから。それより小学生って酷くありませんか? 本当に素直に感動してただけなのに」
頬を膨らませて部長を睨むと、「悪い悪い、屋台を見てこんなにも喜んでくれるなんて嬉しいよ」と言いながら、まだ笑っている。
「まだ笑ってるじゃないですか!」
「いや、笑ってない、もう笑ってない。ところで、屋台を見て喜んでいるそこの白石、どの屋台に行きたいんだ?」
やっぱりまだこんな風に私をからかって楽しんでいる。
さっきまで部長のことすごく尊敬してたけど、そんなの撤回! 撤回してやるんだから!
それにしても至るところに屋台があり、部長にどの屋台に行きたいのかと聞かれても数が多すぎて全然分からない。目に入るメニューは全て美味しそうに見えてくるし、ラーメン屋さんの前には既に行列が出来ている屋台もある。
「部長、何がおすすめですか?」
「何がおすすめって言われてもな、何でも旨いぞ。じゃあ、いろんなメニューがありそうな屋台に入ってみるか?」
それがいいです──と大きく頷き、部長と道沿いを並んで歩いていく。そして部長が、ここにするか──とひとつの屋台のお店で立ち止まった。
暖簾をあげて、いいですか? とお店の人に聞くと、「はい、いらっしゃい、どうぞ」と若いお兄さんが椅子に座るよう手のひらを向けてくれた。
部長と一緒に真ん中の長椅子に腰かける。
既に3人組のサラリーマンらしきおじさんたちがビールを片手に焼き鳥を食べていて、屋台の中では美味しそうなおでんが煮込まれ、その横では串焼きがじゅうじゅうと音を立てながら焼かれていた。
「うわぁ、ほんとに屋台がいっぱいだ! 部長、こんな街中に屋台がたくさんあるんですか? これっていつも?」
「そうだよ。いつもこんな風にたくさん出てるよ」
「すっごーい。こんなにたくさんあるとは全然思ってなかった」
仕事帰り風のスーツは着ているものの、完全に観光客だということが丸わかりなように周りをぐるぐると見渡しながら目を見開く。
「あっ、あの屋台ラーメンだって。こっちは焼き鳥、おでんにもつ鍋、焼きラーメン? 天ぷらに明太子入り玉子焼き? うそっ、タコスまである!」
興奮して暖簾に書いてあるメニューを読み上げる私に、部長は我慢が出来なくなったように吹き出した。
「白石、お前興奮しすぎだろ? まるで小学生の子が喜んでるみたいだな」
「だっ、だって、ほんとにこんなにたくさん屋台があるなんて思ってなかったんですから。それより小学生って酷くありませんか? 本当に素直に感動してただけなのに」
頬を膨らませて部長を睨むと、「悪い悪い、屋台を見てこんなにも喜んでくれるなんて嬉しいよ」と言いながら、まだ笑っている。
「まだ笑ってるじゃないですか!」
「いや、笑ってない、もう笑ってない。ところで、屋台を見て喜んでいるそこの白石、どの屋台に行きたいんだ?」
やっぱりまだこんな風に私をからかって楽しんでいる。
さっきまで部長のことすごく尊敬してたけど、そんなの撤回! 撤回してやるんだから!
それにしても至るところに屋台があり、部長にどの屋台に行きたいのかと聞かれても数が多すぎて全然分からない。目に入るメニューは全て美味しそうに見えてくるし、ラーメン屋さんの前には既に行列が出来ている屋台もある。
「部長、何がおすすめですか?」
「何がおすすめって言われてもな、何でも旨いぞ。じゃあ、いろんなメニューがありそうな屋台に入ってみるか?」
それがいいです──と大きく頷き、部長と道沿いを並んで歩いていく。そして部長が、ここにするか──とひとつの屋台のお店で立ち止まった。
暖簾をあげて、いいですか? とお店の人に聞くと、「はい、いらっしゃい、どうぞ」と若いお兄さんが椅子に座るよう手のひらを向けてくれた。
部長と一緒に真ん中の長椅子に腰かける。
既に3人組のサラリーマンらしきおじさんたちがビールを片手に焼き鳥を食べていて、屋台の中では美味しそうなおでんが煮込まれ、その横では串焼きがじゅうじゅうと音を立てながら焼かれていた。