すべてが始まる夜に
「屋台ってほんとにいっぱいありますね」

歩きながら周りを見ると、サラリーマンや観光客と思われるカップルや家族連れ、そして女子同士など、いろんな人たちが楽しそうに屋台に座ってお酒を飲みながら料理を食べている。

「さっきの場所が天神だろ、それからこの先が中洲、この一帯に屋台が多いんだ。そしてそのもっと先が俺たちの宿泊するホテルだ」

「私たちの泊まるホテルってここから近いんですか?」

「この天神から歩いて30分くらいかな」

そうなんだ。
30分ならこのまま歩いて帰れるよね?
ということは、ラーメン食べても少しはカロリーを消費できるはず!

「部長、途中でラーメン食べたあと、ホテルまで歩いて帰ってもいいですか?」

「それはいいけど、結構距離あるぞ」

「大丈夫です。カロリーを消費しないと」

そんなこと気にしてるのかよ──と、またフフッと軽く笑われる。

「部長みたいにイケメンな人はいいですよ。少々太っても全然モテるじゃないですか。女性は日々努力しないと大変なんです」

「体型は俺も気にするよ。だって昼間2人前も鯛茶食べただろ? さっきもビールも飲んで、これからラーメンだ。確実に太るパターンだ」

お腹をさすりながら笑いかけてくる部長に、私もつられるようにお腹をさする。

そうだ忘れてた。私もお昼に鯛茶食べたんだった。
ごはん2杯も食べて、ビール飲んで、おでん食べて、牛すじ煮込み食べて、これからラーメンって……。

「福岡って美味しいものがいっぱいですね。ここで生活してたら太っちゃいそう」

「福岡のごはんは美味しいよ。まだ他にもつ鍋や水炊きもあるし、魚介類も旨いぞ」

「もつ鍋いいですね。美味しそう! ……そう言えば部長って、福岡出身なんですか?」

私は気になっていたことを思い出し、部長に尋ねてみた。
< 179 / 395 >

この作品をシェア

pagetop