すべてが始まる夜に
夕方、部長から資料の確認が終了したとのメールが届いていた。少し気になるところだけ自分が修正しておいたから、会議の人数分を印刷して用意しておいてほしいという内容だった。いつもの業務メールと変わらない内容に、少し安心する。
もしかしたら、さっきあんな風に感じてしまったのは実は自分の気にしすぎだったのかもしれない。
ただ単に、部長がお茶を買おうとした瞬間に目が合ってしまい、それを私が逸らされたと勘違いしてしまったのだろう。
あのレッスンをお願いしたことが原因で、部長のことを気にしすぎて仕事にまで支障がでてくるなんて言語道断だ。
もっと気を引き締めて業務に携わらないと……。
私は部長が修正して送り直してくれた資料を開くと、会議の人数分の数字を入力して印刷を始めた。
翌日の会議では、部長が私の資料をもとに店舗として使用するギャラリーの外観や、内装をどういう風に改装するかを伝え、周りにある他店のカフェの位置や、その顧客の年齢層、コーヒーやフードの特徴などを説明していった。
若菜ちゃんも吉村くんも、そして青木さんもみんな興味深く熱心に話を聞いていた。
そう、うちの部には若菜ちゃんと吉村くんの他にもう一人、青木さんという分析専門のおじさんがいる。
毎朝各店舗から自動的にあがってくる売り上げデータを元に、価格別、メニュー別、地域別などの動向を分析している人だ。
以前は私たちと同じように新店舗立ち上げの仕事をしていたのだけれど、数多くの新店舗立ち上げに関わってきたからか、あらゆる分析力が非常に優れているため、分析専門へとシフトしたのだ。
「以上説明した通り、福岡の新店舗では試験的に既存のフードに何か手を加えて提供してみようと考えていて、企画案がまとまり次第、上に申請してみようと思っている。だからいろんな意見を聞かせてほしい。その前に青木さん、分析の面から何か意見を聞かせていただいてもいいですか?」
部長が青木さんに向かって声をかけた。
青木さんは、そうですねぇ──ともう一度資料をペラペラと捲ると、顔を上げて私たち全員の顔を見渡した。
もしかしたら、さっきあんな風に感じてしまったのは実は自分の気にしすぎだったのかもしれない。
ただ単に、部長がお茶を買おうとした瞬間に目が合ってしまい、それを私が逸らされたと勘違いしてしまったのだろう。
あのレッスンをお願いしたことが原因で、部長のことを気にしすぎて仕事にまで支障がでてくるなんて言語道断だ。
もっと気を引き締めて業務に携わらないと……。
私は部長が修正して送り直してくれた資料を開くと、会議の人数分の数字を入力して印刷を始めた。
翌日の会議では、部長が私の資料をもとに店舗として使用するギャラリーの外観や、内装をどういう風に改装するかを伝え、周りにある他店のカフェの位置や、その顧客の年齢層、コーヒーやフードの特徴などを説明していった。
若菜ちゃんも吉村くんも、そして青木さんもみんな興味深く熱心に話を聞いていた。
そう、うちの部には若菜ちゃんと吉村くんの他にもう一人、青木さんという分析専門のおじさんがいる。
毎朝各店舗から自動的にあがってくる売り上げデータを元に、価格別、メニュー別、地域別などの動向を分析している人だ。
以前は私たちと同じように新店舗立ち上げの仕事をしていたのだけれど、数多くの新店舗立ち上げに関わってきたからか、あらゆる分析力が非常に優れているため、分析専門へとシフトしたのだ。
「以上説明した通り、福岡の新店舗では試験的に既存のフードに何か手を加えて提供してみようと考えていて、企画案がまとまり次第、上に申請してみようと思っている。だからいろんな意見を聞かせてほしい。その前に青木さん、分析の面から何か意見を聞かせていただいてもいいですか?」
部長が青木さんに向かって声をかけた。
青木さんは、そうですねぇ──ともう一度資料をペラペラと捲ると、顔を上げて私たち全員の顔を見渡した。