すべてが始まる夜に
会議が終わり、若菜ちゃんと一緒に戦略部のフロアに戻っていると、後ろから吉村くんに「白石、ちょっといいか」と呼び止められた。
振り返ると同時に若菜ちゃんが、「茉里さん、私は先にフロアに戻りますね」と言って足早に去っていく。
突然立ち去った若菜ちゃんの後ろ姿を見つめていると、白石、さっきの話なんだけどさ──と、吉村くんの声が聞こえてきた。
「あっ、ごめん。なに? 会議の話?」
「そう。前にさ、俺が目黒に新しいカフェが出来たって話したの覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ。かなり人気で気になってるって言ってたカフェでしょ」
「あそこに一緒に行ってみないか? 人気があるってことはそのカフェに何かアイデアがあるってことだろ? 今回の企画案に何か役立つんじゃないかなって思ってさ。俺もこれから自分が手掛けるカフェの勉強になると思うし。今週末あたりどうかな?」
吉村くんが私の顔を窺うように視線を向けてきた。
週末と言われて、部長とのあの約束が頭に浮かぶ。
先に約束しているのは部長とだけど、あの約束ってレッスンだもんね。
それに、レッスンといってもあんなことをするためのレッスンだし……。
重要度で言えば、誰がどう見ても仕事の誘いの方が重要だ。
私が黙って考えていると、吉村くんが申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ご、ごめん。急に誘われても困るよな。週末は予定があるよな」
「ううん、大丈夫。その代わり、日曜日でもいいかな?」
「えっ? ああ、いい。全然いい。それより、白石はほんとにいいのか? 予定があったんじゃ……」
「大丈夫だよ。何時にする? 人気っていうことは朝早い方がいいよね。10時くらいに目黒駅で待ち合わせしよっか」
「わかった。じゃあ、日曜日の10時に目黒駅な。ありがとう」
吉村くんは嬉しそうに笑顔を向けると、若菜ちゃんと同じように私の前から足早に去っていった。
振り返ると同時に若菜ちゃんが、「茉里さん、私は先にフロアに戻りますね」と言って足早に去っていく。
突然立ち去った若菜ちゃんの後ろ姿を見つめていると、白石、さっきの話なんだけどさ──と、吉村くんの声が聞こえてきた。
「あっ、ごめん。なに? 会議の話?」
「そう。前にさ、俺が目黒に新しいカフェが出来たって話したの覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ。かなり人気で気になってるって言ってたカフェでしょ」
「あそこに一緒に行ってみないか? 人気があるってことはそのカフェに何かアイデアがあるってことだろ? 今回の企画案に何か役立つんじゃないかなって思ってさ。俺もこれから自分が手掛けるカフェの勉強になると思うし。今週末あたりどうかな?」
吉村くんが私の顔を窺うように視線を向けてきた。
週末と言われて、部長とのあの約束が頭に浮かぶ。
先に約束しているのは部長とだけど、あの約束ってレッスンだもんね。
それに、レッスンといってもあんなことをするためのレッスンだし……。
重要度で言えば、誰がどう見ても仕事の誘いの方が重要だ。
私が黙って考えていると、吉村くんが申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ご、ごめん。急に誘われても困るよな。週末は予定があるよな」
「ううん、大丈夫。その代わり、日曜日でもいいかな?」
「えっ? ああ、いい。全然いい。それより、白石はほんとにいいのか? 予定があったんじゃ……」
「大丈夫だよ。何時にする? 人気っていうことは朝早い方がいいよね。10時くらいに目黒駅で待ち合わせしよっか」
「わかった。じゃあ、日曜日の10時に目黒駅な。ありがとう」
吉村くんは嬉しそうに笑顔を向けると、若菜ちゃんと同じように私の前から足早に去っていった。