すべてが始まる夜に
「部長、ひとつ提案があるのですけど……」
「提案? 何の?」



「あの……、私でセックスの練習をしませんか──?」




鳩が豆鉄砲を食らったような顔というのはこういう顔を言うのだろうか?
私の言葉に部長は目をまん丸にしてそのまま固まってしまった。そして「はぁ?」とキリッとした眉を大きく曲げて、何とも言えない表情を向けた。

「し、白石、お前正気か? 自分が今何を言ったのか分かっているのか?」

「はい。私は初めてなので部長が上手いとか下手とかわかりません。色々試してみて、お互いの未来の相手のために練習しませんか?」

「お、お前、ほんとに何を言ってるんだ」

「付き合うわけじゃないんです。ただの練習相手です。後腐れないし、部長も次の彼女と付き合ってまた下手だと言われないように練習しておくのはいいと思いませんか? 次にまた下手だと言われたらもう立ち直れないと思いますよ」

私の真剣な表情に、「そんなに下手下手と連呼するな」といじけたような不機嫌そうな表情を見せる。
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