すべてが始まる夜に
「俺思うんだけどさ、レッスンってセックスだけじゃなくて、この際その他のことも慣れておいた方がいいんじゃないか?」

「その他のこと、ですか? それってどういう……意味、ですか?」

「例えばさ、セックスを終えたカップルが別々で寝ると思うか? 寝ないだろ? そのまま同じベッドで朝まで過ごすよな?」

部長の言葉にコクンと頷く。

「それに風呂だって一緒に入るだろうし、旅行だって一緒に行くだろ? 茉里は今までそんなこと一度もしたことないんだよな?」

「はい、してない……です」

「だから俺はこの3ヶ月の間にそういうことも慣れておいた方がいいと思うけど。茉里はどう思う?」

どう思う? と聞かれても、私の当初の目的は “キス以上の経験がしたい” ただそれだけだった。
だからそれに付随するお泊りもそうだし、一緒にお風呂に入ることや旅行に行くことなんて、そんなことまで経験しようとは全く考えていなかった。
部長に言われてそういうことも必要だと初めて気づく。

確かに部長と一緒なら怖くもないし、恥ずかしがっても嫌がっても昨日のようにどんな私でも受け入れてくれるような気がする。
3ヶ月間、そういう経験もさせてもらえるのならもっと自分に自信がつくはずだ。

「じゃあ、ここで過ごす週末の3ヶ月間は悠くんと一緒に寝るってこと?」

「ま、まあ、そういうことになるな……」

「お風呂も一緒に入るってこと?」

「最初はハードルが高いかもしれないけど、それも慣れておいた方がいいよな?」

そう。ハードルは高いけど、これも絶対慣れておいた方がいい。
3ヶ月のレッスンが終わったら、もう部長に頼ることはできないのだ。

「そう、ですよね……。じゃあ来週から……そのレッスンも追加でお願いしてもいいですか?」

私がお願いするように頭を下げると、部長はなぜか微妙な表情を浮かべていた。
< 248 / 395 >

この作品をシェア

pagetop