すべてが始まる夜に
「やっと2人だけの時間になったな」

水面から出ている私の肩を温めるように、部長が手でお湯を掬ってかけてくれる。
そしてそのまま顔を近づけて、ちゅっと唇にキスをした。

「茉里、顔が赤いぞ?」

「だって……嬉しいもん……」

「嬉しいって……。そんなこと言われたら我慢できなくなるだろ?」

部長はそう言うと、私の腕を掴んで立ち上がった。
せっかく夜の露天風呂でも楽しもうと思っていたのに、そのままベッドへと連れて行かれる。
部長に組み敷かれ、ドクン──と胸が大きく飛び跳ねた。

今、初めて感じる──。
好きな人にこんなことをされるのが、こんなにも幸せなものだとは知らなかった。

私、初めての相手が大好きな悠くんで本当によかった。
悠くんが好き──。

「悠くん……」

自然と零れ落ちた声に部長が動きを止めた。

「茉里、どうして泣いてるんだ?」

心配そうな顔をして、目尻に流れた涙をそっと指で拭ってくれる。

「悠くんが好きって思ったら……うれしくて……」

すると部長は口元を緩めて微笑み、私の頭を優しく撫でてくれた。

「俺も茉里が大好きだよ。茉里を愛してる」

蕩けるような甘い声で囁かれ、唇にキスが落とされた。
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