すべてが始まる夜に
「悠くんは、こんなの誰かに見られて恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくないよ。それより俺は茉里を誰かに取られる方が怖い。お前は驚くほど天然すぎるからな。俺がどれだけ苦労したと思うか?」

「てっ、天然って……」

「数々の天然発言を真面目な顔で言われたら心配で仕方ないだろ? それより茉里、下の風呂に行くのか? それとも俺と一緒に朝の露天風呂に入るか?」

意地悪にニヤつきながら尋ねてくる部長に、あらためて自分の身体を見ると、その答えはひとつしかなく──。
結局私は大きなお風呂には入ることができず、部長と一緒にまた露天風呂に入る羽目になった。


「朝の露天風呂はやっぱり気持ちがいいもんだな」

楽しそうに笑顔を向けてくる部長に、思いっきり頬を膨らませた顔を向け返す。

「そんなに怒るなって。また一緒に旅行に来たらいいだろ?」

「ほんと? また一緒に悠くんと旅行に行けるの?」

たくさんキスマークをつけられたことは許せないけれど、また一緒に部長と旅行に行けると思うと嬉しくて顔がニヤけてくる。

「ああ。旅行もそうだけど、これからたくさん2人でいろんな思い出を作っていこう。………それにしても結構ついてるな。すごい数だな、それ」

「ゆっ、悠くんがつけたんでしょ……」

再び頬を膨らませた私に、「だからそんなに怒るなって」と笑いながら部長は私の後ろに移動して、抱きしめてきた。
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