すべてが始まる夜に
「悠くん、わたし悠くんと一緒に過ごしたい。それで……いつか悠くんの奥さんになりたい……」

「ほんとか? 茉里……?」

部長が目を見開いて私を見つめる。

私は部長の目を見てしっかりと頷いた。

「悠くん、ほんとに……ここで一緒に暮らしてもいいの?」

「もちろんだよ。その方が俺も安心だしな」

「そしたら……毎日、悠くんのごはん作って待っててもいい?」

「えっ?」

「だって悠くん、ちゃんとごはん食べないでしょ。ビール飲んでプリン食べて終わりだったら私心配だし……」

「茉里、いくら何でも俺だって毎日そんな食生活じゃないよ。でも、飯作って待っててくれるのか?」

「うん。私の方が帰るの早いし、それに……2人分作りたい」

「ありがとな。でも茉里も仕事してるんだから、疲れたときは無理しなくていいからな」

部長は嬉しそうに微笑むと、机の上に置いてあった部屋の鍵を私の手のひらにのせて、ぎゅっとその手を閉じた。
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