すべてが始まる夜に
「部長のことを好きって思ったのは何がきっかけだったんですか?」

その質問に、葉子が若菜ちゃんに興味深々な目を向ける。

「なに、若菜ちゃん。若菜ちゃんももしかして好きな人がいたりするの?」

「ちっ、違います。少し気になって……」

「まあ、それは私も気になるかな。茉里、何がきっかけだったの? 部長を好きになった理由」

好きになった理由を聞かれても、部長のここが良かったから好きというのではなく、一緒に過ごすうちにいつの間にか好きになっていたわけで、緊張でドキドキすると思っていたのが、好きだからドキドキするのだと気づくまで、随分時間がかかってしまった。
何がきっかけといわれても、よくわからない。

「何がきっかけと言われても……。最初は緊張でドキドキするんだって思っていたから、そのドキドキが好きだからなんだとは全然気づかなくて……」

「茉里らしいと言えば茉里らしい答えだけど……。でも自分から好きって言ったんでしょ。それはどうして?」

葉子が真面目な顔をして尋ねてきた。
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