すべてが始まる夜に
３月の最終週の日曜日、私は羽田空港内のホテルに泊まっていた。
明日はいよいよカフェラルジュのオープンの日だ。
明日、私が始発の便で福岡へ移動するのに、上野からの移動は大変だからという理由で、部長が空港内のホテルを予約してくれたのだ。
部長に迷惑をかけることはしたくなかったのに、結局はこういう手間を取らせてしまった。

「悠くん、まだ飛行機の中だよね……」

時計を確認すると、福岡空港に到着するまでまだ１時間以上もある。今年に入ってからずっと部長と一緒に過ごしていたので、久しぶりにひとりで過ごす夜に寂しさを感じてしまう。

さっきまで部長と一緒に空港内でごはんを食べて、福岡便に乗る部長を見送ってきたというのに、少し離れただけでこんなにも寂しいと感じてしまうなんて……。

今日はお昼すぎにマンションを出て、部長と一緒に羽田空港までやってきた。
前の出張の時は一緒にタクシーで空港へ向かったけれど、今回は時間があるので電車での移動だ。
途中、空港へと向かう電車の中で、部長が拗ねたようにぼやき始めた。
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