すべてが始まる夜に
「よかった。急に声が聞こえなくなっちゃったから心配しちゃったじゃん」

「俺……これから東京に戻ろうかな」

「えっ、戻る? 東京に? ど、どうして? 悠くんもしかして忘れものでもしたの? 忘れものなら明日私が持って行ってあげるよ」

「いや、なんでもない……。土曜まで長いな……」

「土曜? お祝いの日?」

「ああ、楽しみだな。………茉里、明日気をつけて来いよ。待ってるから」

「うん、わかった。悠くんも今日は早く寝てね」

「茉里もな。おやすみ」

「おやすみなさい」

幸せな気持ちで電話を切る。
部長とこうして話をするだけで、さっきまで寂しいと感じていた心が、幸せな気持ちに包まれていた。
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