すべてが始まる夜に
スマホでホテルの場所を確認しながら行ったのに、駅を出てから少し迷ってしまい、ホテルのフロントに到着したときには既に15時を過ぎていた。
ロビーに座って待っている部長の姿が見え、急いで近づいていく。

「悠くん、ごめんなさい。少し遅れちゃった。ちょっと迷っちゃって……」

「迷うって、このホテルはほぼ駅と直結だろ？」

「そうなんだけど、全然ここまで辿りつけなくて……」

部長はククッと笑うと、「チェックインはもう済ませてあるから、先に部屋に行こう」と、エレベーターホールに向かって歩き出した。

エレベーターに乗り、階数がどんどん上へとあがっていく。22階になって、やっとエレベーターの扉が開いた。

「すごいね、こんなに高層階に泊まるんだ」

「そうだよ。今日はお祝いだからな」

部屋の前に到着して、部長がカードキーでドアを開ける。するとそこにはラグジュアリーな広々とした部屋が広がっていた。
大きな窓の向こうには青い海が広がり、遠くにはレインボーブリッジが見える。燦々と降り注ぐオレンジ色の太陽の光と、青い空と海が重なり合い、とてもいい景色だ。

「うわぁ、うわぁ、悠くんすごいよ、見て！ すごく綺麗！」

「気に入った？」

「うん、すごく素敵！ もしかしてここってスイートのお部屋？」

そう尋ねると、部長は少し残念そうな表情を見せた。
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