すべてが始まる夜に
白石と顔を合わせながらごはんを食べていると、俺はふとひとつ気になることが頭に浮かんできた。
今日は土曜日だ。こんな土曜日に俺となんかと食事をして、彼氏は大丈夫なのか?

そのことを口にすると、笑顔でごはんを食べていた白石の箸が止まり、急に無言になり固まった。

えっ? 俺何かまずいこと言ったか?
もしかしてこれはセクハラ発言だったか?

「あ、悪い。これはセクハラ発言だな。ほんと悪い」

しまったと思いながら白石に謝る。
今日はこいつに謝ってばかりだ。
白石の目には俺は情けないを通り越して最悪な上司として映っているだろう。

ほんとに悪かった、許してくれ──と再び頭を下げていると、「あの、部長、セクハラ発言ついでにひとつ聞いてもいいですか?」と逆に俺の顔色を窺うように白石が質問をしてきた。

「恋愛ってどうやったらいいんですか?」

はっ?
どうやって恋愛をしたらいいかって?

「私、今まで失敗しないようにってマニュアル本通りにきちんと順番を守って付き合ったつもりなんです。でもうまくいかないというか……」

ちょっと待て待て。
マニュアル本? 順番?
確か今、恋愛って言ったよな?
全く話がわからないんだが……。
急にどうしたんだ?

白石の顔を見て考えるが、こいつが何を言おうとしているのかが分からない。
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