すべてが始まる夜に
私だったらこんな冷たい彼だと腹が立つし、とっとと別れちゃうけどな。
それより彼の方はなんで結婚したくないんだろう?
他に好きな人でもいるの?
そっちの方が気になるな。

そんなことを思っていると、『そんなに結婚を拒むなんて、もしかして私の他に誰か彼女でもいるわけ?』と、彼女の声が聞こえてきた。

やっぱりそう思うよね。
私もそう思うもん。

『そんなヤツいねぇよ』

『じゃあどうして結婚してくれないの? それに福岡でもここでも悠樹の家に行かせてくれなかったじゃない。もしかしてほんとは結婚してるとか? 私を騙してたの?』

彼の結婚をしてくれない理由が分からないため、彼女がかなりイラついているようだ。

『はぁ? 俺のどこにそんな時間があるんだよ。俺の仕事が忙しいことは知ってるよな。だいたい結婚するつもりがないって言っているのに、どうしてお前を家に呼ばないといけないんだ? そんなことしたら期待するだろ。だから呼ばなかっただけだ』

なるほどね。
彼は彼女に期待を持たせないようにきちんと線引きしていたわけか。
そこはまあ一理あるよね。
これはどっちもどっちかなあ。

これ以上話し合っても多分話は平行線のままだ。
彼女には申し訳ないけれど、彼が最初からそこまで線引きしている以上、彼が彼女と結婚する確率はほとんどゼロに等しい。
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