あたしだけのゆうちゃんになってよ
黒目がちで大きな垂れ目があたしのよく知っている表情をしてこちらを見つめている。

トントンと叩いていた足が、スリスリに代わる。ゆうちゃんは甘えた声で「このあとどうするぅ?」と言った。とろんとしたゆうちゃんの視線から逃げるように目を逸らす。胸からじゅくじゅく膿む音がしそうだった。

ゆうちゃんの身体はもう熱いみたいだ。ご飯を食べてお買い物してゆっくりお茶して。いつも通りだったらゆうちゃんの部屋に行ってそれからそれから。あたしだってそうしたい、いつも通り。でももう、そうしてはいられないんだ、繰り返しちゃいけないんだって何十回何百回と思ったんだ。

「ゆうちゃん、あのね…。」

向こうの席で女子高生がこっちを見てひそひそ耳打ちしているのが見えた。あぁ、きっとゆうちゃんの事を噂してる。どこへ行ってもゆうちゃんは女の子たちの視線を集める。こういうのも嫌だったんだ、ずっと。

「もうこうやって会うのこれで最後にしよう。」

「えっ?」

驚いた色で大きく見開かれるゆうちゃんの二つの目。
そうだよね、ゆうちゃんにとっては不意打ちだもんね。でも今日、会った時からあたしは伝えようと決めてたの。二人の楽しい時間の間中ずっと頭の中でぐるぐるさよならを繰り返してた。
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