隣人と仲良し
隣人と仲良しな男、輪王 靭(りんのう じん)。
隣人の土岐 尚人(とき なおと)は美大生。
その尚ナオの友人 香(かおり)さん。
「尚はどうして絵を描いてるんでしょうか?」
同じ年なのに香カオに敬語な靭ジン。
「本人に聞きなさいよ」
ごもっとも。
「そうですけど…賞とか取ってるじゃないですか?尚って。
次は?次は?って期待されそうじゃないですか?」
「だから、本人に聞きなさいよ」
ごもっとも。
「尚はあまり話してくれそうにないから。
この前、家に黙って行ったら白い大きな紙をにらんでました。
回りに絵の具とか筆とかボロボロに散らばってて荒れてる感じだった。
プレッシャーとか感じてるのかなって。
そんなの見て本人には聞けないじゃないですか…」
「そりゃ~あるわよ、プレッシャーなんて。
それであいつ10円ハゲを作ってたわ。
ずっと描けない時期もあったし。
期待したいほどの才能、回りの優しさのつもりの
『次も頑張って』尚にとっては重い、いらない言葉なのよ。
あいつは頑張って絵を描いてるわけじゃないから。
描きたくて描くわけだからね。
期待の思いは重い。
尚はただのバカだから、重いものも持とうとする。
チビだから持てずにつぶれる。
そして、つぶれて描けなくなる。
最終的には路頭に迷う」
尚ナオも大変そうである。