あなたの隣を独り占めしたい(続編まで完結)
「まさか、坂田さんと佐伯さん……が何か関係あるの?」
否定してほしくてそう聞くと、圭吾は否定せずにただ黙っている。
その沈黙に心臓が嫌な音を立てた。
「嘘でしょ? だって坂田さんは圭吾と……」
二人は結局今や誰もが認める恋人になっていて、私も結婚の話でも出たら普通におめでとうと言えそうだなと考えていたくらいなのだ。
でも、彼らの関係は私が想像していたような甘いものとはちょっと違ったようだ。
「栞にひどいことしておいて言えることじゃないのかもしれないけど」
そう前置きしてから、圭吾は今日私を呼び出した本当の理由を口にした。
「正直、俺……あいつとどう付き合っていいかわかんないんだ」
「……どういうこと?」
どうやら坂田さんは性欲が強く、毎晩必ず求められるのだという。
「俺も嫌いじゃないから最初は良かったんだ。でも、疲れてると難しい日もあってさ……」
「あー……うん」
(なんでこんな話、聞かなきゃならないの)
困惑でどんな表情をしていいかわからなくなっている私の前に、チーズの盛り合わせが置かれた。
圭吾の前にもグラスワインが置かれ、私はわずかに揺れる赤い液体に見入った。
(振られた理由がそこなのに、圭吾はどういう神経でこんな話をするんだろう)
圭吾の自分勝手さと無神経さに、流石にはらわたが煮え繰り返りそうだ。
恭弥さんの話なんじゃなければ、速攻で話を切り上げて帰っているところだ。
それでも私は本音をグッと我慢して、客観的な意見を言ってみた。
「ちょっと依存症の傾向があるんじゃない?」
(求めても、求めても寂しさが埋まらないとか。そういう心の傷的な……)
私の意見に圭吾も思い当たるところがあるようで、うんと頷いた。
「……かもな。でも体の浮気を時々は我慢してほしいっていうのは……それはちょっと耐えられそうにないんだ」
坂田さんがそんなに旺盛な人だったとは初耳だけど、私が気になるのはその先だった。
「それで、坂田さんの欲求と佐伯さん……何か関係あるわけ?」
(まさか今も時々会ってるとかだったら、私耐えられないんだけど)
尋ねておいて、心臓が痛い。
胸を押さえながら答えを待っていると、圭吾はポツリと呟いた。
「今までで一番良かったのは佐伯さんなんだって」
「え?」
「この前、美里が酔っ払った口でこぼしたんだ……あの人より良かった人はいないって」
「…っ」
(いつの話なの? 本当だとしても、かなり前のことだよね)
「で、でも。それって随分昔の話なんでしょ?」
「さあ。何年前かは分からないけど、美里が体の関係だけでもいいのにって言うくらいだから相当良かったんじゃない……」
「……」
恭弥さんを忘れられない女性の気持ちは、否定できない。
あの人のルックスだけでなく、どこか捉えどころがない気だるい感じ。
たまに見せる可愛い顔。
そういうのを併せただけでも魅力的なのに、肌に触れてくる指遣いや唇だけでいたるところを麻痺させるほどに感じさせてくるテクニックを知ってしまったら……
それは……簡単に忘れるなんてできないだろう。
(恭弥さんは……一晩で相手の体に自分の魅力を刷り込んでしまう人なんだ)
単にモテるというだけではおさまらない、女性を夢中にさせる天才なのだろう。
(それでも彼自身は私を愛そうとしてくれてるし、必要だと言ってくれてる。だから信じようって決めて……いるんだけど)
空腹に入れたワインが今更のように回ってきて、私は圭吾がその後何を話しているのか耳に入らなくなっていた。
否定してほしくてそう聞くと、圭吾は否定せずにただ黙っている。
その沈黙に心臓が嫌な音を立てた。
「嘘でしょ? だって坂田さんは圭吾と……」
二人は結局今や誰もが認める恋人になっていて、私も結婚の話でも出たら普通におめでとうと言えそうだなと考えていたくらいなのだ。
でも、彼らの関係は私が想像していたような甘いものとはちょっと違ったようだ。
「栞にひどいことしておいて言えることじゃないのかもしれないけど」
そう前置きしてから、圭吾は今日私を呼び出した本当の理由を口にした。
「正直、俺……あいつとどう付き合っていいかわかんないんだ」
「……どういうこと?」
どうやら坂田さんは性欲が強く、毎晩必ず求められるのだという。
「俺も嫌いじゃないから最初は良かったんだ。でも、疲れてると難しい日もあってさ……」
「あー……うん」
(なんでこんな話、聞かなきゃならないの)
困惑でどんな表情をしていいかわからなくなっている私の前に、チーズの盛り合わせが置かれた。
圭吾の前にもグラスワインが置かれ、私はわずかに揺れる赤い液体に見入った。
(振られた理由がそこなのに、圭吾はどういう神経でこんな話をするんだろう)
圭吾の自分勝手さと無神経さに、流石にはらわたが煮え繰り返りそうだ。
恭弥さんの話なんじゃなければ、速攻で話を切り上げて帰っているところだ。
それでも私は本音をグッと我慢して、客観的な意見を言ってみた。
「ちょっと依存症の傾向があるんじゃない?」
(求めても、求めても寂しさが埋まらないとか。そういう心の傷的な……)
私の意見に圭吾も思い当たるところがあるようで、うんと頷いた。
「……かもな。でも体の浮気を時々は我慢してほしいっていうのは……それはちょっと耐えられそうにないんだ」
坂田さんがそんなに旺盛な人だったとは初耳だけど、私が気になるのはその先だった。
「それで、坂田さんの欲求と佐伯さん……何か関係あるわけ?」
(まさか今も時々会ってるとかだったら、私耐えられないんだけど)
尋ねておいて、心臓が痛い。
胸を押さえながら答えを待っていると、圭吾はポツリと呟いた。
「今までで一番良かったのは佐伯さんなんだって」
「え?」
「この前、美里が酔っ払った口でこぼしたんだ……あの人より良かった人はいないって」
「…っ」
(いつの話なの? 本当だとしても、かなり前のことだよね)
「で、でも。それって随分昔の話なんでしょ?」
「さあ。何年前かは分からないけど、美里が体の関係だけでもいいのにって言うくらいだから相当良かったんじゃない……」
「……」
恭弥さんを忘れられない女性の気持ちは、否定できない。
あの人のルックスだけでなく、どこか捉えどころがない気だるい感じ。
たまに見せる可愛い顔。
そういうのを併せただけでも魅力的なのに、肌に触れてくる指遣いや唇だけでいたるところを麻痺させるほどに感じさせてくるテクニックを知ってしまったら……
それは……簡単に忘れるなんてできないだろう。
(恭弥さんは……一晩で相手の体に自分の魅力を刷り込んでしまう人なんだ)
単にモテるというだけではおさまらない、女性を夢中にさせる天才なのだろう。
(それでも彼自身は私を愛そうとしてくれてるし、必要だと言ってくれてる。だから信じようって決めて……いるんだけど)
空腹に入れたワインが今更のように回ってきて、私は圭吾がその後何を話しているのか耳に入らなくなっていた。