あなたの隣を独り占めしたい(続編まで完結)

 その後、坂田は美島と無事に結婚すると噂に聞いて安堵した。

 栞もそのことを知っていて、彼女もそのことを心から喜んだ。

「幸せになってくれるといいな」

 ソファでくつろぎながら彼らの話題に触れると、栞は偽りのない表情でそう言った。
 相変わらずの純粋さに、俺はやっぱり心配な気持ちになる。

(全く、どこまでお人好しなんだか)

 苦笑しつつも、こんな栞をずっと守っていたいと思う。
 過去の傷や罪が、彼女を愛することで癒えて赦されていくのなら……喜んで自分の人生を捧げよう。

「栞」
「なんですか?」
「結婚しよう」
「え?」
 
 当然のように、栞は驚いている。

「栞とずっと一緒に暮らしていきたいと思ってる。そのためには、やっぱり結婚した方がいいだろうから」
「恭弥さん……」

 今日言おうなんて、考えてもいなかった言葉が口について出た。
 だが、それは心の底からの本音で思っている言葉だった。

(社会が決めたルールに縛られる関係に意味なんかないと思っていたが……)

 栞が望んでいるのなら、拒む理由はない。
 むしろそれで幸せを感じてもらえるなら、喜んで……と今では思える。

 栞はプロポーズをきっと喜ぶ。
 そう思ったら、結婚に対してそれほどの抵抗も感じない自分がいた。

「栞、返事は?」
「と、突然すぎて……」
「そうか……じゃ、改めてにするよ」
「や、そんな必要ないです!」
「じゃあ、結婚してくれる?」
「っ、はい」

 真っ赤になって頷く栞がどうしようもなく可愛いと思う。
 俺の汚れた過去も全部まとめて受け入れてくれる栞を、さらに大きく抱きしめていきたいと改めて強く感じた。

「ありがとう。幸せにする」
「ん……はい」

 一緒に幸せに、なんて言えない。
 俺は自分以上に栞が大切で必要なんだ……だから、必ず俺が彼女を幸せにする。

 そう強く胸に誓い、涙を滲ませる彼女の唇にキスを落とした。

END
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