あなたの隣を独り占めしたい(続編まで完結)
アクシデントと接近
その日の夜から食事を頑張ってとってみようと試みたけれど、やっぱり喉を通ったのはコンソメスープくらいだった。
(固形物を食べようとすると、おえってなっちゃうんだよね)
「このままじゃ、また佐伯さんに迷惑かけちゃうなぁ」
なんとなくガラスに映った自分の顔を見てみるけれど、艶がなくて本当に魅力のない女だなと感じる。
(そりゃあ、愛想もつかされるわけだ)
これまでは相手を責める気持ちばかりが大きくて、今まで自分がどうだったかを振り返る時間がなかった。思いがけず佐伯さんと話す機会があったおかげで、少しだけ客観的になれている。
「仮とはいえ、佐伯さんが恋人になってくれたら……少しは元気になれるのかな」
と、そこまで口にしてはっと我に返る。
「な、何考えてんの、私!」
(いくら心配してもらったからって、ワンナイトの帝王なんて……また傷つくだけだよ。ダメ!)
私は頭を振って、勢いよくソファから立ち上がった。
「よしっ、今夜は外食にしよう。お酒と一緒なら食欲も出るかもしれないし」
手早く化粧を直して支度を整えると、私は駅前の繁華街まで出た。
圭吾と思い出の多いお店は避け、お酒も出す地味めな定食屋に入る。
そこは比較的一人で食べにくる客がく、店内も静かだ。
(ここなら落ち着いて食事もできそう)
私は奥の席に腰を下ろすと、一番食べたいと思っていた塩鮭定食とビールを注文した。
注文を終えてほっとしていると、カウンターの端っこに、見覚えのある男性を見つける。
(え……佐伯さん!?)
彼は私に気づいてないようで、もくもくと下を向いて私と同じ塩鮭定食を食べている。
(意外だな。ホテルのレストランとかで食事してるのが似合うのに)
綺麗に口元へ運ばれていく箸先を自然に目で追ってしまう。
魚を食べる姿にすら色気が漂う人なんて、この人くらいなんじゃないだろうか。
「お待たせ!」
張りのある店員の声が響き、目の前に焼きたての塩鮭がのった定食が運ばれてきた。
(美味しそう……)
「いただきます」
私はひとまず何も考えずに鮭の身とご飯を少しずつ口に入れた。
自分の部屋で感じる寂しさが緩和されているせいか、思ったよりするりと喉を通っていく。
(うん、外食にして正解だった)
そのままビールもグッと飲み、久しぶりに感じる開放感に浸る。
「はぁ……美味しい。幸せ」
気分が良くなり、定食を平らげた上にビールのお代わりまでしてしまった。
(最初から外食にしてたらよかった。満足満足)
「さて、お会計を……」
バッグを手に立ち上がろうとした瞬間、目の前の風景がぐにゃりと歪んだ。
(えっ、何?)
立っていられなくなって、ガタンとテーブルに手をつく。
「お客様? どうかされましたか?」
お店の人の驚いて声をかけてくれるけれど、答えを返せない。
(どうしよう……気分悪い)
その時、誰かが私のそばに駆け寄ってくるのがわかった。
「槙野? おい、大丈夫か」
(この声は……)
「佐伯……さん?」
それだけ呟いたところで、私の記憶は途切れた。
(固形物を食べようとすると、おえってなっちゃうんだよね)
「このままじゃ、また佐伯さんに迷惑かけちゃうなぁ」
なんとなくガラスに映った自分の顔を見てみるけれど、艶がなくて本当に魅力のない女だなと感じる。
(そりゃあ、愛想もつかされるわけだ)
これまでは相手を責める気持ちばかりが大きくて、今まで自分がどうだったかを振り返る時間がなかった。思いがけず佐伯さんと話す機会があったおかげで、少しだけ客観的になれている。
「仮とはいえ、佐伯さんが恋人になってくれたら……少しは元気になれるのかな」
と、そこまで口にしてはっと我に返る。
「な、何考えてんの、私!」
(いくら心配してもらったからって、ワンナイトの帝王なんて……また傷つくだけだよ。ダメ!)
私は頭を振って、勢いよくソファから立ち上がった。
「よしっ、今夜は外食にしよう。お酒と一緒なら食欲も出るかもしれないし」
手早く化粧を直して支度を整えると、私は駅前の繁華街まで出た。
圭吾と思い出の多いお店は避け、お酒も出す地味めな定食屋に入る。
そこは比較的一人で食べにくる客がく、店内も静かだ。
(ここなら落ち着いて食事もできそう)
私は奥の席に腰を下ろすと、一番食べたいと思っていた塩鮭定食とビールを注文した。
注文を終えてほっとしていると、カウンターの端っこに、見覚えのある男性を見つける。
(え……佐伯さん!?)
彼は私に気づいてないようで、もくもくと下を向いて私と同じ塩鮭定食を食べている。
(意外だな。ホテルのレストランとかで食事してるのが似合うのに)
綺麗に口元へ運ばれていく箸先を自然に目で追ってしまう。
魚を食べる姿にすら色気が漂う人なんて、この人くらいなんじゃないだろうか。
「お待たせ!」
張りのある店員の声が響き、目の前に焼きたての塩鮭がのった定食が運ばれてきた。
(美味しそう……)
「いただきます」
私はひとまず何も考えずに鮭の身とご飯を少しずつ口に入れた。
自分の部屋で感じる寂しさが緩和されているせいか、思ったよりするりと喉を通っていく。
(うん、外食にして正解だった)
そのままビールもグッと飲み、久しぶりに感じる開放感に浸る。
「はぁ……美味しい。幸せ」
気分が良くなり、定食を平らげた上にビールのお代わりまでしてしまった。
(最初から外食にしてたらよかった。満足満足)
「さて、お会計を……」
バッグを手に立ち上がろうとした瞬間、目の前の風景がぐにゃりと歪んだ。
(えっ、何?)
立っていられなくなって、ガタンとテーブルに手をつく。
「お客様? どうかされましたか?」
お店の人の驚いて声をかけてくれるけれど、答えを返せない。
(どうしよう……気分悪い)
その時、誰かが私のそばに駆け寄ってくるのがわかった。
「槙野? おい、大丈夫か」
(この声は……)
「佐伯……さん?」
それだけ呟いたところで、私の記憶は途切れた。