ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

「外科病棟です。お迎えに来ました」

 出棟のときと同じように声をかけると、オペが終わった患者が待機する部屋から、むっつりした看護師が出てきた。

「遅いんですけど。患者さん、もう二十分も待ってますよ」

「ええ?」

 そんなはずはない。事務員さんが電話に出るところを、間近に見ているのだ。彼女が手元のメモに『サエキさん オペ ムカエ』と書いたのも見ている。

「今さっき、お迎えの電話をもらったんです」

 さすがにこれには言い返した。私だけでなく、病棟の事務員さんの名誉にも関わるからだ。

 私たちはちゃんと自分の仕事をしている。オペ室の連絡が遅れたのではないのか。

「言い訳はいいです。先生、お怒りですからね」

 こちらの言うことに聞く耳を持たず、看護師はつんけんした態度で、わざとと思えるような速度で私にぶつかりながら部屋を出ていく。

「ま、あなたは先生に取り入るのが上手なようだから、怒られないと思うけど」

 ごく小さな声で、私にしか聞こえないように嫌味を言い、看護師は去っていく。

 あの声、多分福田さんだ。完全防護で顔がわからないからといって、大胆な嫌がらせをしてくるじゃないか。

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