ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 相手をしている暇はない。ムカムカしたまま私は待機室へ入った。患者さんはまだ麻酔で眠っている。

「病棟です」

「ああ、待ってた。今日はどうしたんだ。病棟が忙しいのか?」

 重大なオペをした後の患者さんは、医師と一緒に病棟に戻らねばならない。

 進藤さんはオペが終わった後、本当に二十分近く待たされたらしい。

「いいえ、私が連絡を受けたのが五分ほど前で」

 私はいきさつを話した。

「それはオペ室のミスかもしれないな。病棟の着信履歴を見ればわかることだ。さ、病棟に戻ろう」

 私の話を進藤さんが信じてくれたことにホッとした。

 しかし、どうしよう。

 オペ室看護師たちが、わざと違うオペ室に行くように伝えたり、お迎えの電話を遅らせたのだとしたら。

 私ひとりが嫌がらせをされるのは理解できるけど、外科病棟全体に影響を及ぼしたり、患者さんに迷惑をかけたりするのは見過ごせない。

 でも……なあ。

 彼女たちが故意にやったという証拠があるわけじゃなし、今日たまたま全然嚙み合わなかっただけということもあり得るし。

 だいぶモヤモヤしたけど、私は黙っていた。
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