ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
患者さんを送り届けた後、進藤さんは事務員さんに話しかけ、電話の履歴やメモを見ていた。
事務員さんも、先方のミスでいちゃもんをつけられたことが何度もあるので、しっかり時間とどこから誰がかけてきたか、どんな内容だったか、しっかりメモしてある。
彼はそれをコピーし、事務員さんにお礼を言って病棟を出ていこうとした。
「進藤先生」
慌てて追いかけた私を、彼は無表情で振り返る。次の仕事のことを考えている顔だ。
「あの、あまり大事にしないでくれませんか。事務員さんはしっかりと」
「事務員さんがミスしていないことは、履歴とこのメモで証明できる。大丈夫だ」
「オペ室の人も、あまり怒らないでください」
誰だってミスをすることはある。故意だったとしたら問題だけど、それも進藤さんから相手に言うことで、余計に恨まれてしまう。
私が恨まれるほど、外科のみんなや患者さんに迷惑がかかる。それは耐えられない。
「そんなことより、君は君の仕事のことを、目の前の患者のことだけを考えろ」
静かに、でも、完全に私を突き放す言葉。
私はなにも言い返せなかった。