ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 患者さんを送り届けた後、進藤さんは事務員さんに話しかけ、電話の履歴やメモを見ていた。

 事務員さんも、先方のミスでいちゃもんをつけられたことが何度もあるので、しっかり時間とどこから誰がかけてきたか、どんな内容だったか、しっかりメモしてある。

 彼はそれをコピーし、事務員さんにお礼を言って病棟を出ていこうとした。

「進藤先生」

 慌てて追いかけた私を、彼は無表情で振り返る。次の仕事のことを考えている顔だ。

「あの、あまり大事にしないでくれませんか。事務員さんはしっかりと」

「事務員さんがミスしていないことは、履歴とこのメモで証明できる。大丈夫だ」

「オペ室の人も、あまり怒らないでください」

 誰だってミスをすることはある。故意だったとしたら問題だけど、それも進藤さんから相手に言うことで、余計に恨まれてしまう。

 私が恨まれるほど、外科のみんなや患者さんに迷惑がかかる。それは耐えられない。

「そんなことより、君は君の仕事のことを、目の前の患者のことだけを考えろ」

 静かに、でも、完全に私を突き放す言葉。

 私はなにも言い返せなかった。

< 152 / 171 >

この作品をシェア

pagetop