ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
「私はそっちの太っている人に言ってるの。ほんと、目障り。物理的にも邪魔」
邪魔って、もう一回言われた。
太っているから、廊下の幅をとっていると言いたいのだろう。
彼女はランドリーボックスに制服を乱暴に突っ込み、早足で帰っていった。
「なにあれ。物には言いようってものがありますよね」
谷口さんは事のいきさつを知らないので、純粋に怒りを感じているらしい。
私だって、なにも悪いことをしていないのに、ああいう言い方をされると傷つく。けど、言い返したって疲れるだけ。気にしないのが一番だ。
「とにかく、ここは狭いから別の場所に……」
谷口さんを誘導しようとして、どきりとした。
今度は男子更衣室から私の天敵、原研修医が私服で現れたのだ。
女子更衣室と男子更衣室は隣り合っており、その目の前の廊下を挟んだ向かい側に、ランドリーボックスと洗い上がった制服を置いておく棚がある。
つまり私たちは帰る人々が通る廊下にいるわけ。誰に会っても文句は言えない。
「ごめん。私、用事を思い出したので帰ります。また」
「あ、うん。お疲れ様でした」
笑顔で谷口さんと別れ、原研修医から逃げるように早足で出口に向かう。しかし。