ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 この人とふたりきりは落ち着かない。警戒していると、原研修医が口を開いた。

「その……今まで悪かった」

「は?」

 いきなり謝ってこられたので、私はなにも言い返せない。

「最近痩せたよな。それって、進藤先生のためなのか」

「え……。いや、自分のためですよ」

 進藤さんは、私が太っていてもいいと言ってくれているんだもの。

 軽く否定すると、原研修医はまたぼそぼそと話を続ける。

「婚約って、本当なのか」

「はい」

「進藤先生と、お前が」

 いったいなにが言いたいのか。首を傾げると、彼はいきなり大きい声で言った。

「医者と結婚したかったのか。金を持っているから」

「えっ? はいっ?」

「医者なら誰でもいいのか」

 怖い顔で私を見下ろす原研修医に、少しだけ恐怖を感じた。

 なにこの人。情緒不安定なの? なにを言っているかわからない。

 ぽかんとしていると、彼は私の肩をつかんで言った。

「俺でもいいんじゃないのか。進藤先生はやめて、俺と付き合え」

 これには完全に虚を衝かれた。予想外の言葉をしばらく頭の中で繰り返し、飲み込んだ。

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