ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
進藤さんはそれらを完全に無視し、大股で私を連れて歩く。
職員通用出入口を出てから駐車場まで、何度指をさされたか。
車に乗り込んでやっと、進藤さんの手が離れた。
「いったいどうして……」
噂が広がるのは早い。すぐに病院中に私たちが手を繋いで歩いていたことが知れ渡るだろう。
今まで進藤さんは病院の中では他人の態度を貫いていた。誰も見ていないところで甘くささやかれたことはあるけど。
それが今になって、いったいなぜ。
「千紗が俺のものだってことをわからせてやったんだ」
「ええ?」
そりゃあ手を繋いで同じ車に乗り込めば、ただの他人とは思いづらいだろうけど。
なぜいきなり、私と付き合っているアピールをしたんだろう。
首を傾げる私に、進藤さんは運転しながら言った。
「とにかく帰る」
なんか……怒ってる?
原研修医があまりに気持ち悪かったから?
あ、そうか。婚約者、つまり私に変なことをされそうになったから、怒っているんだ。
私はしっかり拒否していたし、やましいことはない。
早く怒りが収まるといいなと思いつつ、余計なことを言わないように黙っていた。
マンションに着くまで、お互いに無言だった。