ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 最初は本当に太っていることを嘲笑するような態度だった。

「レストランを追い出されそうになったとき、君は彼らに情けをかけた」

「そうでしたっけ」

 追い出さなくても、というようなことを言ったような記憶はある。

「最初はバカにしていても、そういう子がきれいになって、強くなって、しかも優しくしてくれたら、好きになってしまうだろう」

 それは……漫画やドラマなら、そういうこともあるかもしれないけど。

「君は本当にきれいになったんだ。俺しか知らない原石だったのに」

 褒めすぎですよ、と笑おうとした瞬間、キスで声を封じられた。

 熱い唇が、むさぼるように重なってくる。

「もともとかわいかったけど」

 わずかに離れた唇が、濡れて光る。

「これ以上きれいになる前に、正式に俺だけのものになってくれ。じゃないと、俺は安心して千紗を外に出せなくなる」

 彼に追い詰められた背中が、玄関のドアに押し付けられる。長い両腕に閉じ込められ、長いキスをされた。

 息が止まりそうになった瞬間を見計らったように、進藤さんの唇が離れる。

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