ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 プロポーズから数か月、地道なダイエットを続けた私は、とうとう平均体重にまでお肉を落とすことに成功した。

 私は佑さんと一緒に選んだウエディングドレスを着て、今ここに立っている。

 昔のような卑屈な気持ちはない。みんなの前でも、堂々としていられる。

「きれいだよ、千紗」

 佑さんが私の髪にキスをした。

 参列者からわあっとひときわ高い歓声が上がる。

「さあ、ブーケを投げて」

 タキシードを着た彼は、まるで童話の中の王子様のよう。

 私はうなずき、「行くよー!」と前に集まった女性たちに声をかけた。

「そーれ!」

 高く空に放り投げたガーベラのブーケは、大きな弧を描き、伸ばされた手の間に落ちていく。

「あ、や、やったぁ」

 ブーケは、栄養士の谷口さんの手におさまっていた。

 みんなが笑顔で拍手をする。

 披露宴ではお母さんへの手紙を読む私が泣いて、つられてみんなが泣いた。

 会場から帰るゲストにプチギフトを配って見送るときには、またみんな笑っていた。

「どうもありがとうございました」

 口々に優しい「おめでとう」が返ってきた。

 みんなを見送った後で、残された私たちは控室に向かう。
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