ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
などと考えていると、お母さんは意外な言葉を口にした。
『お見合いしてほしいの』
「お……オミアイ?」
『そう。お見合いよ、お見合い』
はあと深いため息が聞こえてきた。なにか事情があるみたい。
「なんでいきなりお見合い?」
私はまだまだ看護師という仕事に集中したい。結婚など考えてもいない。
ま、考えるような相手もいないんですけどね。
『茉莉ちゃんいるでしょ、あなたの従妹の』
「あー、同い年の茉莉ちゃん。元気?」
従妹の茉莉ちゃんは実家同士が近くて、たまに遊んでいた。けれどそれも親について回っていた小学生までだ。中学に進んでからは、お互い部活や塾で忙しく、自然と会わなくなった。
『それがねえ……茉莉ちゃん、駆け落ちしちゃったのよ』
「はい?」
母曰く、茉莉ちゃんは意に添わぬ結婚をさせられそうになり、付き合っていた彼氏と駆け落ちしてしまったみたい。
茉莉ちゃんの家は歯科医院を営んでおり、変な虫がつかないうちに、いい家柄の人と結婚させようと強制的にお見合いを何度もさせたらしい。
とうとう嫌になったのか、茉莉ちゃんはブチ切れて出ていってしまったとのこと。『ふざけんな』と書置きだけ残して。