ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました
これはいい。食事が済んだら即解散できそう。
「いただきます」
先方にやる気がないなら、礼儀正しい子を演じる理由もない。すでに任務は果たしたのだから、食事は自由にしていいはずだ。
私は箸を持つなり、揚げたてのてんぷらに塩をつけ、豪快にかぶりついた。サクッといい音が響いた。
「ちょっと、千紗ちゃん」
お見合いはそもそも、主役同士がお互いのことを知るためのものなので、食事は出てもあまり食べられないことが普通だと事前に聞いてきた。
でも私は、最初から食べる気満々だった。だって、こんなに豪華なランチを残したら作ってくれた人に失礼だし、なによりもったいない。
てんぷらをサクサク食べ終えたら、次はお刺身だ。美味しいものは美味しいうちに。
次々にお皿を空にしていく私を、おじさんとおばさんは呆気にとられたように黙って見つめていた。
茶わん蒸しをスプーンできれいに空にし、再び箸に持ち替えたとき、ふと正面の席を見た。
「ふっ……くくく……」
眉をひそめているご両親の横で、肩を震わせて笑う進藤先生。
あら……進藤先生って、こんなにかわいい顔で笑うんだ。初めて見たかも。